2024年2月1日木曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(2)ペアで執拗にヤマドリを追う。
Series: Hunting Techniques of Golden Eagles (2)Pair relentlessly pursues Copper Pheasant.
系列:金雕狩獵技巧 (2)成對無情追逐銅長尾雉
Пара неустанно преследует медного фазана.

  •  北東から南西に伸びる長さ3,000m、高さ300mの主尾根から北西向きに4つの谷が下っており、北西から順に1番谷、2番谷、3番谷、4番谷と呼ぶことにする。主尾根の南西端は西向きに二股に分かれており5番谷と呼ぶことにする。
  • 残雪期の午後、オスが1番谷へ飛び込んだ。そこからヤマドリが飛び出して南西向きに逃避するところをメスのイヌワシが見ていた。イヌワシペアは南西に移動して2番谷の左岸支尾根にとまった。オス、メスの順で谷に飛び込むと、ヤマドリが飛び出してさらに南西向きに逃避した。イヌワシペアは3番谷を通り越して4番谷の右岸支尾根にとまった。再びオス、メスの順で谷に飛び込むと、ヤマドリが飛び出して5番谷の方向へ飛去して見えなくなった。ヤマドリを追ってイヌワシペアも見えなくなった。既に薄暗い時間だったのでこの日の観察は終了した。
  • 翌朝、どちらもそのうを満杯に膨らませたイヌワシペアが5番谷から現れた。

2024年1月29日月曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(1)沢に隠れてヤマドリに近づく。
Series: Hunting Techniques of Golden Eagles (2) Hide in a creek and approach Cooper pheasant.
系列:金雕的狩獵技巧 (1) 藏身於溪流中,接近銅長尾雉。
Серия: Способы охоты на беркутов (1) Приближение горных львов, прячущихся в ручьях.

  • 日本イヌワシ研究会によれば、イヌワシの生息ペア数は1980年代の半分近くに減少しています。特に、人間の生活域に近く観察の容易な生息地ほど減り方が著しいことから、イヌワシの行動を詳しく観察する機会はかつてより大幅に少なくなったと考えられます。
  • イヌワシの保全を志す方々の観察経験を補うことを目的に、イヌワシの狩りの特徴的な観察例をシリーズで投稿することにしました。1例ずつの不定期配信ですので時々このブログをチェックしていただければ幸いです。
  • それでは最初の観察例です。
  • 残雪期、尾根の上の岩場から飛び立ったオスのイヌワシは、およそ1km先まで水平飛行しながら展葉前の落葉樹林を見下ろした。イヌワシは落葉樹林を通り過ぎた所にある深い沢の源頭部に飛び込むと、翼角を開いて翼先をすぼめ、頭を下にしたスペード型で急降下した。150mほど沢を下ると急に翼をひねって浮き上がり、沢を外れて落葉樹の隙間へ突入した。足元からヤマドリが飛びだして斜面下方へ逃避した。イヌワシはヤマドリを見失い、次の獲物を探しに飛び去った。
  • イヌワシが突入した落葉樹の隙間(幹間距離)は15.5m×41.0m(沢幅を含む)であった。

2023年12月31日日曜日

2023年、新潟県におけるイヌワシの繁殖状況は、繁殖成功4ペア、繁殖失敗又は未繁殖7ペア、繁殖成功率0.364でした。

  •   2023年に県内で確認されたイヌワシの繁殖成功率は0.364で、2年連続で低下しました。
  • 内訳は、繁殖成功数(少なくとも1羽以上のヒナを巣立たせたペア数)が4(推定1含む)、繁殖失敗数(1羽もヒナを巣立たせることのできなかったペア数)が7でした。
  • 繁殖成功の1例は、水力発電所の災害復旧工事にかかる保全対策が成功した事例でした。工事関係者にお礼申し上げます。
  • 繁殖失敗の1例は、4kmもの大幅な営巣地移動を繰り返している事例でした。営巣適地に安住する前提として、道路工事及び道路供用後の観光客の入込への対策が必要と考えられます。
  • 昨年確認されなくなった2ペアのうち営巣中心域(暫定値は巣場所から1.2km以内)で山岳レースが行われた三条市の事例では、レース企画者、市及び中越森林管理署のご尽力により、レース場所の変更が実現しました。年末の調査では2羽の飛行が目撃されたことから、ペアの復活が期待されます。

2023年12月6日水曜日

風力タービンとイヌワシとの衝突数予測の改善点について

 海外では風力タービンへのイヌワシの衝突が多発していますが日本では東北地方の1例にとどまっています。しかし、森林に囲まれた風力タービンでは死骸の発見が難しく、死骸探索調査の前に死肉食者に持ち去られている可能性も考慮すると、氷山の一角しか見ていない可能性があります。
 さて、望ましいことではありませんが衝突数のデータが蓄積されたことから、衝突数を予測できるようになりつつあり、国内の環境アセスメントに導入した事例もあります。 
 衝突数予測は大きく3つのモデルで構成されているようです。
    1. 観察されたイヌワシの位置データから風力タービン計画地の飛行回数を予測するモデル。
    2. 風力タービン計画地を飛行するイヌワシが風力タービンと衝突する回数を予測するモデル。
    3. 風力タービン稼働後に発見された衝突死骸数を衝突予測数で割ることによりイヌワシが風力タービンとの衝突を回避する確率を予測するモデル。
 ここでは3の回避率予測モデルの改善点を中心に書いてゆきます。
  • 様々な鳥類の回避率の予測値はNatureScotのホームページから検索でき、イヌワシについてはWhitfield(2009)の研究を引用して0.99とされています。この研究では、死肉食者による衝突死骸の持ち去り率ゼロを前提に、バンドのモデル(Band et al., 2007)で予測された衝突回数に対する回避率を計算しています。
  • しかし、その翌年に、猛禽類を対象にした新たな死骸持ち去り実験のデータをSmallwood et al.(2010)が発表しました。この実験データを適用すると、従来型の死骸持ち去り実験データを適用した推定衝突数を大きく上回ります。したがって、回避率は0.99から大きく低下することになります。
  • ある環境アセスメント準備書のまとめには、「ブレード・タワーへの接近・接触については予測の不確実性の程度が大きいと考えられる。」と書かれていました。モデルを用いた予測を公表する場合はこのような真摯な姿勢が大切です。
  • まとめると、回避率込みの衝突数予測には下記の事項を考慮する必要があります。
  1. Bandのモデル又は近似できるモデルと組み合わせること。
  2. 新たな実験データに基づく死骸持ち去り率を適用した回避率を用いること。
  3. 不確実性に対応するため適切な信頼区間を設定すること。
  • さいごに、衝突数の予測値と従来型持ち去り率を適用した回避率を組み合わせた20年あたりの衝突数が0.12個体で、新たな持ち去り率で0.202個体(又は0.360個体)に修正されたと仮定した場合の計算結果を書いておきます。なお、事故等の稀なできごとがある期間内に発生する回数の確率分布に使われるポアソン分布を仮定しました。
    • 20年間で1個体以上衝突する確率は18.3 %(又は30.2%)。
    • 20年間で予測される衝突回数の95 %信頼区間は1個体(又は2個体)。
[2023/12/10一部更新]

2023年3月17日金曜日

次期生物多様性国家戦略案の意見募集に応募しました。

  • 令和5年1月30日から2月28日まで、環境省 次期生物多様性国家戦略(案)に関するパブリックコメントの募集が行われました。
  • 環境省報道発表によれば、同案は、2030年までに自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させるためのロードマップと位置付けられています。
  • 新潟県イヌワシ保全研究会では、上記ロードマップの実現に協力するため、パブリックコメントに応募し、以下4項目について提案を行いました。

  1. (行動目標1-1-3 国立公園等の利用計画と規制計画のバランスについて) 国立公園等(国定公園及び県立自然公園を含む)は適正な利用計画と規制計画のバランスの上に成り立っていなければなりません。利用計画については2-2-3から2-2-5に具体的な施策及び数値目標が掲げられています。一方、規制計画については1-1-3に目標が1例示されたのみであり、利用者の増加にともなって野生生物の生息・生育環境に対する影響も増大することが予測されます。また、近年、国立公園等特別地域において利用者によるイヌワシの繁殖阻害事例が多発していることもふまえて、1-1-3に下記の内容を追加していただきたくお願いします。
    •  地域の自然状況を熟知したNGOや民間事業者等を活用し、国立公園等の利用による希少野生生物への影響を把握すること。 
    •  イヌワシの存続を図るため、必要に応じて「猛禽類保護の進め方(改訂版)ー特に、イヌワシ、クマタカ、オオタカについてー」を準用し、時期を限定した利用調整地区の指定等、適切な措置を講じること。 
    •  県立自然公園条例に利用調整地区条項のない都道府県については条例の改正を行うこと。
  2. (行動目標1-2-7 森林計画に関する文章の追加について) 次期国家戦略案では、現行の国家戦略145ページに書かれていた下記の文章が削除されています。「イヌワシ、クマタカについては、各地の国有林において、生息環境等の調査及び巡視を実施するとともに、必要に応じて、営巣地周辺の人工林において、採餌等に適正な空間・照度を確保するための列状間伐等抜き伐りを実施し、生息・生育環境を整備します。」(以下当該文章)この森林整備事業及び民有林を含む類似事業では、採餌環境が改善されただけでなく、食物網を通じた生物多様性への理解が深まり、多様な主体による連携が実現する等の効果がありました。また、アンブレラ種を指標にした環境整備事業の普及は、森林国日本における30 by 30の達成に大きく貢献することが期待されます。一方、環境省「イヌワシ生息地拡大・改善に向けた全国目標」に示されたとおりイヌワシの減少が続いていること、人工林が間伐適期から主伐適期へ移行したこと、天然生二次林の利用停滞も生物多様性の劣化に関連すること等の課題があります。つきましては、当該文章の「人工林」を「人工林並びに天然生二次林」に、「列状間伐等による抜き伐り」を「帯状又は群状の伐採ないし列状間伐等による抜き伐り等」に書き換える等の修正をした上で、1-2-7に追加していただきたくお願いします。
  3. (行動目標1-3-1 鉛製銃弾に起因する鉛中毒の防止について) 本条項を高く評価します。なお、鳥獣被害も深刻であることから、非鉛製銃弾への切り替えに伴う認定鳥獣捕獲者等の負担軽減にもご留意いただきたくお願いします。
  4. (行動目標2-4-4 風力発電施設のバードストライク対策について) 本条項を高く評価します。また、バードストライクの発生しない構造の国産風力発電機の普及又は開発に民間事業者と連携して取り組んでいただきたくお願いします。



2022年12月31日土曜日

2022年、新潟県におけるイヌワシの繁殖状況は、繁殖成功6ペア、繁殖失敗又は未繁殖9ペアの0.4でした。

 

  •  2022年に県内で確認されたイヌワシの繁殖成功率は0.400 [0.163₋0.677]でした。
  • 内訳は、繁殖成功(少なくとも1羽以上のヒナを巣立たせたペア数)が6(推定1を含む)、繁殖失敗(1羽もヒナを巣立たせることのできなかったペア数)が9(推定3を含む)でした。
  • 繁殖成功のうち1例は、2羽の幼鳥が確認されたことから、2022年の新潟県における生産力(1ペアあたり幼鳥生産数)は0.467 [0.188₋0.962]でした。
  • 繁殖失敗の1例は、営巣岩壁の上を冬山登山者が通過するたびに繁殖中断が続いていた湯沢町の事例です。今年は繁殖直前にオスの入れ替わりがあったことから営巣しませんでしたが、首都圏の山岳会から登山自粛にご協力いただいたことから、来年の繁殖に期待がかかります。

2022年12月27日火曜日

令和4年度野生生物保護功労者表彰 布川耕市さんに日本鳥類保護連盟会長賞!

  • 令和4年6月11日、新潟県愛鳥センター紫雲寺さえずりの里において、令和4年度野生生物保護功労者表彰式が行われ、新潟県イヌワシ保全研究会創設メンバーで新潟県イヌワシ保護基金の設立者でもある布川耕市さんに日本鳥類保護連盟会長賞が授与されました。

布川さんの功績はこちら(環境省報道発表資料より)

  1.  県内各地で行われる探鳥会や講演の講師を務め、自然や野鳥保護思想を広めるための貢献や、講演等を通じて森林生態系の理解や保全につながる普及啓発活動に尽力した。
  2. イヌワシやコアジサシなど希少鳥類の生態調査と保全対策を担当し、事業関係者や保護対策案等の助言をした。また、各種希少鳥類の生息分布調査の保護資料の収集と整備に貢献した。 
  3. 国土交通省飯豊山系砂防事務所環境アドバイザーとして胎内川や荒川流域の保全管理事業に関わり、野性鳥類保護の観点から適切な助言を行った。 

  • 新潟県イヌワシ保全研究会は、この受賞を励みにイヌワシと県民社会との共存・共生により一層取り組んでまいります。

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2018年9月8日、イヌワシにも配慮した雪国観光圏スノーカントリートレイルがオープンしました!

雪国観光圏スノーカントリートレイルは、3県7市町村(新潟県:湯沢町、南魚沼市、魚沼市、十日町市、津南町、長野県:栄村、群馬県:みなかみ町)の山岳路、歴史ある古道、温泉地などをつなぐ全長307kmのロングトレイルコースです。 著名なアドベンチャーレーサーであり歴代コースディレ...