2024年2月11日日曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(4)ノスリの群れを狙う。
Series: Hunting Techniques of Golden Eagles (4) Attacking a flock of Eastern Buzzards.
系列:金雕的狩獵技巧 (4) 攻擊一群東方鵟。
Серия: Способы охоты на беркутов (4) Нападение на стадо канюков.

  • 秋のタカ渡りの時期、山頂にかかる雲の中にイヌワシペアが出入りを繰り返していた。
  • 東方から10個体ほどのノスリの群れが通りかかると、メスイヌワシは分断された群れの一部を追って北へ向かった。
  • 残りの群れを追って南へ向かったオスイヌワシは、波状飛翔を行ってノスリの群れを更に上下に分断した。
  • オスイヌワシは波状飛翔の頂点で大きくはばたき、上の群れに向かって上昇したが、自分の3分の1の体重しかないノスリに追いつくことは困難と思われた。
  • 次の瞬間、オスイヌワシは真っ逆さまにきりもみ降下し、圧倒的な速度差で下の群れに追いつくと、1羽を背中からワシづかみした。力が抜けて翼を開いたノスリをぶら下げて、オスイヌワシはゆっくり谷の中へ降りていった。
  • イヌワシは、クマタカ、トビ、ハチクマ、ノスリ、サシバ、オオタカ、ハヤブサ及びフクロウなど、多種類の猛禽類を狩りの対象にしているが、雲を利用して忍び寄ったり待ち伏せしたり、ペアで挟み撃ちにしたり、相手の攻撃を誘ってから不意打ちしたりして、動きの速い相手に対応している。

2024年2月8日木曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(3)3km離れたトラツグミを捕える。
Series: Hunting Techniques of Golden Eagles (3) Catching a White's Thrush 3 km away.
系列:金雕的狩獵技巧 (3) 捕捉 3 公里外的虎斑地鸫。
Серия: способы охоты беркутов (3) Ловля тигрового дрозда в 3 км.

  • 積雪期の午後、大きな営巣谷を西に下る支尾根にとまっていたオスイヌワシが南西に向かってゆっくり飛び立った。
  • 徐々に翼をすぼめて速度を増したオスは、低い尾根をへだてた支谷に入ったところで南向きに急降下した。
  • 急いで支谷の見える位置に観察場所を移動すると、冬枯れした広葉樹林がまばらな北東向きの急斜面から、トラツグミをつかんだオスが舞い上がったところだった。
  • とまり場所からトラツグミをつかんで舞い上がった場所まで3km離れていた。

2024年2月6日火曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(狩りの定義)

  •  本年1月からシリーズ:イヌワシの狩りの投稿を開始しました。遅ればせながら本シリーズにおける狩りの定義を明らかにしておきます。
  • 狩りの定義は1993年に動物社から発刊された「オックスフォード動物行動学事典」(デイヴィド・マクファーランド編、木村武二監訳)の377から380ページ、「狩猟 Hunting」に準拠しています。
  • 同事典では狩猟を下記のように定義しています。
「狩猟は捕食行動の1つの側面で、ある種に属する動物が、他種の個体をとらえる過程をさす。したがって狩猟は、より一般的な探索行動や探査行動とは区別される。狩猟には積極的な探索が含まれることも、また含まれないこともある。(後略)」
  • また、同事典では狩猟の手法及び過程を下記のように分類しています。
【屍肉食】 
【忍び寄り】
【追跡】(誘導追跡、弾道襲撃、にせの襲撃)
【捕獲】
【共同狩猟】
  • イヌワシの狩りは、上記のすべてを使い分け、または組み合わせて行われます。なお、獲物の探索のみの行動は、本シリーズの対象から除外しました。

2024年2月1日木曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(2)ペアで執拗にヤマドリを追う。
Series: Hunting Techniques of Golden Eagles (2)Pair relentlessly pursues Copper Pheasant.
系列:金雕狩獵技巧 (2)成對無情追逐銅長尾雉
Пара неустанно преследует медного фазана.

  •  北東から南西に伸びる長さ3,000m、高さ300mの主尾根から北西向きに4つの谷が下っており、北西から順に1番谷、2番谷、3番谷、4番谷と呼ぶことにする。主尾根の南西端は西向きに二股に分かれており5番谷と呼ぶことにする。
  • 残雪期の午後、オスが1番谷へ飛び込んだ。そこからヤマドリが飛び出して南西向きに逃避するところをメスのイヌワシが見ていた。イヌワシペアは南西に移動して2番谷の左岸支尾根にとまった。オス、メスの順で谷に飛び込むと、ヤマドリが飛び出してさらに南西向きに逃避した。イヌワシペアは3番谷を通り越して4番谷の右岸支尾根にとまった。再びオス、メスの順で谷に飛び込むと、ヤマドリが飛び出して5番谷の方向へ飛去して見えなくなった。ヤマドリを追ってイヌワシペアも見えなくなった。既に薄暗い時間だったのでこの日の観察は終了した。
  • 翌朝、どちらもそのうを満杯に膨らませたイヌワシペアが5番谷から現れた。

2024年1月29日月曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(1)沢に隠れてヤマドリに近づく。
Series: Hunting Techniques of Golden Eagles (2) Hide in a creek and approach Cooper pheasant.
系列:金雕的狩獵技巧 (1) 藏身於溪流中,接近銅長尾雉。
Серия: Способы охоты на беркутов (1) Приближение горных львов, прячущихся в ручьях.

  • 日本イヌワシ研究会によれば、イヌワシの生息ペア数は1980年代の半分近くに減少しています。特に、人間の生活域に近く観察の容易な生息地ほど減り方が著しいことから、イヌワシの行動を詳しく観察する機会はかつてより大幅に少なくなったと考えられます。
  • イヌワシの保全を志す方々の観察経験を補うことを目的に、イヌワシの狩りの特徴的な観察例をシリーズで投稿することにしました。1例ずつの不定期配信ですので時々このブログをチェックしていただければ幸いです。
  • それでは最初の観察例です。
  • 残雪期、尾根の上の岩場から飛び立ったオスのイヌワシは、およそ1km先まで水平飛行しながら展葉前の落葉樹林を見下ろした。イヌワシは落葉樹林を通り過ぎた所にある深い沢の源頭部に飛び込むと、翼角を開いて翼先をすぼめ、頭を下にしたスペード型で急降下した。150mほど沢を下ると急に翼をひねって浮き上がり、沢を外れて落葉樹の隙間へ突入した。足元からヤマドリが飛びだして斜面下方へ逃避した。イヌワシはヤマドリを見失い、次の獲物を探しに飛び去った。
  • イヌワシが突入した落葉樹の隙間(幹間距離)は15.5m×41.0m(沢幅を含む)であった。

2023年12月31日日曜日

2023年、新潟県におけるイヌワシの繁殖状況は、繁殖成功4ペア、繁殖失敗又は未繁殖7ペア、繁殖成功率0.364でした。

  •   2023年に県内で確認されたイヌワシの繁殖成功率は0.364で、2年連続で低下しました。
  • 内訳は、繁殖成功数(少なくとも1羽以上のヒナを巣立たせたペア数)が4(推定1含む)、繁殖失敗数(1羽もヒナを巣立たせることのできなかったペア数)が7でした。
  • 繁殖成功の1例は、水力発電所の災害復旧工事にかかる保全対策が成功した事例でした。工事関係者にお礼申し上げます。
  • 繁殖失敗の1例は、4kmもの大幅な営巣地移動を繰り返している事例でした。営巣適地に安住する前提として、道路工事及び道路供用後の観光客の入込への対策が必要と考えられます。
  • 昨年確認されなくなった2ペアのうち営巣中心域(暫定値は巣場所から1.2km以内)で山岳レースが行われた三条市の事例では、レース企画者、市及び中越森林管理署のご尽力により、レース場所の変更が実現しました。年末の調査では2羽の飛行が目撃されたことから、ペアの復活が期待されます。

2023年12月6日水曜日

風力タービンとイヌワシとの衝突数予測の改善点について

 海外では風力タービンへのイヌワシの衝突が多発していますが日本では東北地方の1例にとどまっています。しかし、森林に囲まれた風力タービンでは死骸の発見が難しく、死骸探索調査の前に死肉食者に持ち去られている可能性も考慮すると、氷山の一角しか見ていない可能性があります。
 さて、望ましいことではありませんが衝突数のデータが蓄積されたことから、衝突数を予測できるようになりつつあり、国内の環境アセスメントに導入した事例もあります。 
 衝突数予測は大きく3つのモデルで構成されているようです。
    1. 観察されたイヌワシの位置データから風力タービン計画地の飛行回数を予測するモデル。
    2. 風力タービン計画地を飛行するイヌワシが風力タービンと衝突する回数を予測するモデル。
    3. 風力タービン稼働後に発見された衝突死骸数を衝突予測数で割ることによりイヌワシが風力タービンとの衝突を回避する確率を予測するモデル。
 ここでは3の回避率予測モデルの改善点を中心に書いてゆきます。
  • 様々な鳥類の回避率の予測値はNatureScotのホームページから検索でき、イヌワシについてはWhitfield(2009)の研究を引用して0.99とされています。この研究では、死肉食者による衝突死骸の持ち去り率ゼロを前提に、バンドのモデル(Band et al., 2007)で予測された衝突回数に対する回避率を計算しています。
  • しかし、その翌年に、猛禽類を対象にした新たな死骸持ち去り実験のデータをSmallwood et al.(2010)が発表しました。この実験データを適用すると、従来型の死骸持ち去り実験データを適用した推定衝突数を大きく上回ります。したがって、回避率は0.99から大きく低下することになります。
  • ある環境アセスメント準備書のまとめには、「ブレード・タワーへの接近・接触については予測の不確実性の程度が大きいと考えられる。」と書かれていました。モデルを用いた予測を公表する場合はこのような真摯な姿勢が大切です。
  • まとめると、回避率込みの衝突数予測には下記の事項を考慮する必要があります。
  1. Bandのモデル又は近似できるモデルと組み合わせること。
  2. 新たな実験データに基づく死骸持ち去り率を適用した回避率を用いること。
  3. 不確実性に対応するため適切な信頼区間を設定すること。
  • さいごに、衝突数の予測値と従来型持ち去り率を適用した回避率を組み合わせた20年あたりの衝突数が0.12個体で、新たな持ち去り率で0.202個体(又は0.360個体)に修正されたと仮定した場合の計算結果を書いておきます。なお、事故等の稀なできごとがある期間内に発生する回数の確率分布に使われるポアソン分布を仮定しました。
    • 20年間で1個体以上衝突する確率は18.3 %(又は30.2%)。
    • 20年間で予測される衝突回数の95 %信頼区間は1個体(又は2個体)。
[2023/12/10一部更新]

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