2024年11月14日木曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(7)ペアハンティングのときのコミュニケーションの可能性
Series: Hunting Techniques of Golden Eagles (7) Communication possibilities when pair hunting.
系列:金雕的狩獵技巧 (7) 成對狩獵時的溝通可能性。
Серия: способы охоты беркутов (7) Возможности общения при парной охоте.

 

  • 残雪がまばらな4月の丘陵で1羽のメスイヌワシが餌を探していた。
  • メスイヌワシは浅い窪地の灌木を見下ろしてしばらく旋回したのち、丘陵の頂を越えて裏側の谷で半径の大きな旋回を繰り返しながら徐々に高度を下げていった。
  • 狩りをあきらめたのかと思った直後、旋回するメスの下からオスが現れた。
  • メスはオスをしたがえて窪地にもどると、高空にとどまって旋回を始めた。
  • オスはメスの下で灌木に向かって波状に急降下と急上昇を繰り返す。
  • オスは疲れたのか窪地上部の冬枯れの広葉樹にとまったが、メスに攻撃されて(叱られて?)すぐ飛び立ち、再び灌木に向かって急降下と急上昇を繰り返した。
  • すると、灌木の中から2羽の冬毛の残ったノウサギが現れて、窪地を駆け上がって丘陵の背後に消えた。
  • 上空で見張っていたメスは、ノウサギを追いかけて丘陵の背後に消えた。
  • オスもメスに続き、しばらくするとカラスが群がって騒ぎ立てた。
  • 別の事例では、遠くの狩り場から営巣地にかえって旋回しながら急降下と急上昇を繰り返すオスの下からメスが現れて、オスの後を追って狩り場へ向かう様子が観察された。
  • また、若いオスイヌワシが狩り場の林縁にとまっていると、頭上に現れた成熟したメスイヌワシが半径の大きな旋回を繰り返しながらいったん降下したのち旋回上昇して、狩り場を遠方から見下ろすことのできる尾根の松に誘導する様子が何度も観察された。
  • 成熟したのち類まれな狩りの技術を身につけた上記のオスは、新たに迎えた若メスが狩り場に突撃しようと体をゆすり始めると、まだ待て!とばかりにメスの眼前に急降下して突撃を制する様子が観察された。
  • 日本のイヌワシAquila chrysaetos japonicaは、開放的環境を好む世界のイヌワシの中にあって、雪崩道、老齢広葉樹林、薪炭林などのモザイク的な森林環境に生息する特殊な亜種である。他亜種に比べて短い翼や華奢な足指などの外見的特徴だけでなく、根曲がりや灌木の下に隠れた獲物をペアで協力して捕らえるための高度なコミュニケーション能力を身につけて、森林国日本に適応しているのかもしれない。
  • 現状ではイヌワシのコミュニケーションを科学的に証明できていないものの、生息環境の改善や野生復帰などの保護増殖事業において留意すべきであろう。

シリーズ:イヌワシの狩り(6)キツネ狩り?ノウサギ狩り?
Series: Hunting Techniques of the Golden Eagle (6) Is it a fox hunt? Is it hare hunting?
系列:金雕的狩獵技巧 (6) 您是在獵狐狸嗎?是在獵野兔嗎?
Серия: Охотничьи приемы беркута (6) Охотитесь ли вы на лис? Охотитесь ли вы на зайцев?

  •  新潟県におけるイヌワシの産卵時期は最深積雪深の時期を過ぎた直後であることが多い。
  • 標高1,000m、積雪3mを越える老齢広葉樹林でペアのイヌワシが交互に急降下してキツネを狙っていた。
  • すると、キツネの近くのブナの根元からノウサギが跳び出した。
  • メスは目標を切り替えて、上空から足を垂らして逃走中のノウサギを掴み上げ、ブナの樹頂に舞い上がった。ノウサギは一瞬で絶命したようだった。
  • オスは引き続きキツネを狙って急降下を繰り返していた。
  • それに気付いたメスは、ノウサギをブナの枝の上に置き、枝が折れて平らになるまで数回押し付けた。
  • オスのキツネ狩りにメスが加勢すると、キツネは灌木の根曲がりに後ずさりし、深雪に潜り込んで見えなくなった。
  • キツネ狩りをあきらめたイヌワシペアは、ブナの樹頂からノウサギを回収して産卵を控えた営巣地に飛び去った。

2024年2月25日日曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(5)おどし、待ち伏せ、忍び寄りでノウサギを追い詰める。
Series: Golden Eagle Hunting Techniques (5) Scaring, Ambushing, and Sneaking up on Japanese Hare.
系列:金雕狩獵技巧 (5) 嚇唬、埋伏和偷襲日本野兔。
Серия: Приемы охоты на беркута (5) Пугать, устраивать засады и подкрадываться к японским зайцам.

  • 1月上旬、木の生えていない雪の斜面の向こうにある谷へ、オスのイヌワシが飛び込んだ。
  • 谷の手前、標高1,300mの雪の斜面を点々とノウサギの足跡が横切り、疎らに生えたダケカンバの林に入るのが遠目からわかった。
  • 谷から浮かび上がってきたイヌワシは、波状飛翔しながらノウサギの足跡をたどってダケカンバ林の上空に到達した。
  • そのまま林の上空を通り過ぎたイヌワシは、雪に覆われた小ピークにとまってダケカンバ林から出てくるノウサギを待ち伏せた。
  • 20分を過ぎた頃、小ピークから飛び立ったイヌワシは、ノウサギが消えたダケカンバ林の上空で停空飛翔した後、ゆっくり移動して斜面上部のダケカンバの林縁にとまった。
  • イヌワシはすぐに飛び立つと、ノウサギのおよその位置を把握したのか、ダケカンバ林の中央部に向けておどしと思われる激しい急降下を繰り返した。
  • イヌワシは再びダケカンバ林にとまったが、前回よりも林の中央部に近づいている。
  • そろりと飛び立ったイヌワシは、ダケカンバ林の中央に開いたギャップに忍び寄り、静かに両足を雪面に降ろす。
  • 一瞬で雪の中からノウサギをつかみ取り、1km離れた尾根に運んでから摂食した。
  • 一連の狩りにかかった時間は少なくとも1時間43分、移動距離は2km弱だった。近年では、この狩場を含むあちこちの冬山にバックカントリースノーボーダーや登山者が訪れるようになり、イヌワシが落ち着いて狩りのできる環境が少なくなっている。

2024年2月11日日曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(4)ノスリの群れを狙う。
Series: Hunting Techniques of Golden Eagles (4) Attacking a flock of Eastern Buzzards.
系列:金雕的狩獵技巧 (4) 攻擊一群東方鵟。
Серия: Способы охоты на беркутов (4) Нападение на стадо канюков.

  • 秋のタカ渡りの時期、山頂にかかる雲の中にイヌワシペアが出入りを繰り返していた。
  • 東方から10個体ほどのノスリの群れが通りかかると、メスイヌワシは分断された群れの一部を追って北へ向かった。
  • 残りの群れを追って南へ向かったオスイヌワシは、波状飛翔を行ってノスリの群れを更に上下に分断した。
  • オスイヌワシは波状飛翔の頂点で大きくはばたき、上の群れに向かって上昇したが、自分の3分の1の体重しかないノスリに追いつくことは困難と思われた。
  • 次の瞬間、オスイヌワシは真っ逆さまにきりもみ降下し、圧倒的な速度差で下の群れに追いつくと、1羽を背中からワシづかみした。力が抜けて翼を開いたノスリをぶら下げて、オスイヌワシはゆっくり谷の中へ降りていった。
  • イヌワシは、クマタカ、トビ、ハチクマ、ノスリ、サシバ、オオタカ、ハヤブサ及びフクロウなど、多種類の猛禽類を狩りの対象にしているが、雲を利用して忍び寄ったり待ち伏せしたり、ペアで挟み撃ちにしたり、相手の攻撃を誘ってから不意打ちしたりして、動きの速い相手に対応している。

2024年2月8日木曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(3)3km離れたトラツグミを捕える。
Series: Hunting Techniques of Golden Eagles (3) Catching a White's Thrush 3 km away.
系列:金雕的狩獵技巧 (3) 捕捉 3 公里外的虎斑地鸫。
Серия: способы охоты беркутов (3) Ловля тигрового дрозда в 3 км.

  • 積雪期の午後、大きな営巣谷を西に下る支尾根にとまっていたオスイヌワシが南西に向かってゆっくり飛び立った。
  • 徐々に翼をすぼめて速度を増したオスは、低い尾根をへだてた支谷に入ったところで南向きに急降下した。
  • 急いで支谷の見える位置に観察場所を移動すると、冬枯れした広葉樹林がまばらな北東向きの急斜面から、トラツグミをつかんだオスが舞い上がったところだった。
  • とまり場所からトラツグミをつかんで舞い上がった場所まで3km離れていた。

2024年2月6日火曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(狩りの定義)

  •  本年1月からシリーズ:イヌワシの狩りの投稿を開始しました。遅ればせながら本シリーズにおける狩りの定義を明らかにしておきます。
  • 狩りの定義は1993年に動物社から発刊された「オックスフォード動物行動学事典」(デイヴィド・マクファーランド編、木村武二監訳)の377から380ページ、「狩猟 Hunting」に準拠しています。
  • 同事典では狩猟を下記のように定義しています。
「狩猟は捕食行動の1つの側面で、ある種に属する動物が、他種の個体をとらえる過程をさす。したがって狩猟は、より一般的な探索行動や探査行動とは区別される。狩猟には積極的な探索が含まれることも、また含まれないこともある。(後略)」
  • また、同事典では狩猟の手法及び過程を下記のように分類しています。
【屍肉食】 
【忍び寄り】
【追跡】(誘導追跡、弾道襲撃、にせの襲撃)
【捕獲】
【共同狩猟】
  • イヌワシの狩りは、上記のすべてを使い分け、または組み合わせて行われます。なお、獲物の探索のみの行動は、本シリーズの対象から除外しました。

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2018年9月8日、イヌワシにも配慮した雪国観光圏スノーカントリートレイルがオープンしました!

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