2025年9月25日木曜日

木質ペレットの国内生産量が10年ぶりに減少!自給率も続落!

  • 2050年カーボンニュートラルの目標達成に向けて国産木質燃料の利用に期待がかかっています。
  • しかし、林野庁の統計データによると、2024年における木質ペレットの国内生産量は10年ぶりに減少しました。
  • 2014年までは50 %を越えていた自給率も2.4 %に低下しています。
  • 日本は古来より輪伐方式の萌芽再生林(いわゆる薪炭林)という持続可能な林業を編み出して燃料を自給してきました。
  • 戦争特需やパルプ生産などによるオーバーユースがたたって持続可能性に黄色信号が灯りましたが、1980~1990年頃には自然の力で回復し、再利用が可能になっていたと考えられます。
  • しかし、タイミングを合わせたように、主に奥山林を対象としていた天然林保護運動が薪炭林も含めるものに変容し、再利用を阻む一因になりました。
  • 今では萌芽再生の可能な期間を過ぎてしまった天然林が多くなり、幹が太り過ぎて伐採効率も低下したため、木質ペレットの生産も薪炭林の再利用も簡単ではありません。
  • この間に、カナダの原生林や、ベトナムの再生困難なほど短い伐採サイクルで生産された木質ペレットが大量輸入されているうたがいがもたれています。
  • 日本と木材輸入国双方の持続可能な林業を実現し、カーボンニュートラルに貢献するためには、森林生態学の専門知識に基づいた林業政策が必要です。また、専門家や行政だけでなく、バイオマス発電企業、木材商社、自然保護団体、そして国民が将来に対する責任を分かち合って行く必要があるのではないでしょうか。

2025年7月28日月曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(8)ニホンザルの群れを襲う。
Series: Hunting Techniques of the Golden Eagle (8) Attacking a Troop of Japanese Macaques.
系列:金雕的狩獵技巧 (8) 攻擊一群日本獼猴。
Серия: Техники охоты беркута (8) Нападение на стаю японских макак.

  • 中南米に生息するオウギワシHarpy Eagle、アフリカに生息するカンムリクマタカCrowned Eagle、フィリピンに生息するフィリピンワシPhilippine Eagleなど、翼開長2mクラスの森林性大型ワシ類は霊長類を捕食することが知られています。フィリピンワシにいたっては、1995年の国鳥指定を機に改名されるまではサルクイワシと呼ばれていたほどです。
  • 人のいないシーズンオフのスキー場を登っていると、右に大きくカーブしたゲレンデの上の方からけたたましい吼声が近づいてきました。
  • 野犬の群れかと思って身構えていると、駆け下りてきたのは10数頭のニホンザルの群れでした。
  • サルの群れは、カーブを曲がらずにゲレンデ横切り、周りを囲むブナ林へ、次々に飛び込んで行きます。
  • 足の遅い仔ザルがブナ林へ入るのを見届けていた大きな大人のサルがブナ林へ駆け込もうとした瞬間、地表数メートルの空中をすべるように黒い塊が迫ってきました。
  • 大ザルがかろうじてブナ林へ逃げ込むと、黒い塊は一気に上空へ舞い上がり、翼を開いてオスのイヌワシに姿を変えました。
  • その後、つがい相手のメスも現れて、ブナ林の上空を徘徊しましたが、高さ2mもあるチシマザサの林床に阻まれてサルを捕らえることができず、ブナ林の向こうへ姿を消しました。
  • 別のイヌワシ生息地では、送電線の上空をたった1羽の幼いイヌワシが通りかかっただけで、送電線下の伐採地で採食していたニホンザルの群れは周りの森林に逃げ込みました。そして、イヌワシが飛び去っても、しばらくの間、1~2頭のサルが鉄塔に上って周囲を見張っていました。
  • このように、亜種イヌワシAquila chrysaetos japonicaも、他の森林性大型ワシ類と同様にサルを襲撃し、たびたび営巣中の巣へ運んでいる様子が目撃されています。

2025年7月17日木曜日

原著論文「生息地選択のモデル化における土地被覆と地形の間の相互作用の重要性(仮訳)」が公開されました。
The original article “Importance of interactions between land cover and topography in modeling habitat selection” is now available.
原始文章: 土地覆蓋和地形在棲息地選擇建模中的相互關係的重要性》已上載
оригинальные статьи: Важность взаимосвязей между растительным покровом и топографией при моделировании выбора местообитаний

  •  The original article "Importance of interplay between land cover and topography in modeling habiatat selection (Natsukawa et al. 2024" が公開されました。
  • 筆頭著者で新潟大学農学部助教の夏川遼生氏による概要の和訳も公開されました。
  • イヌワシの生息環境の保護及び改善を方向付ける上で非常に有益な論文ですので是非お読みください。
  • 以下、概要の和訳に記載された要約です。
    • 生物の生息地としての土地被覆の重要性は、その土地被覆が位置する地形条件によって異なる。
    • イヌワシが繁殖地を決定する際には「巣より標高の高い急傾斜地に位置する老齢林」の存在が特に重要である。

2025年6月10日火曜日

令和6年度森林・林業白書の巻頭は生物多様性特集。
FY2024 Forest and Forestry White Paper opens with a special feature on biodiversity.
FY2024 森林與林業白皮書以生物多樣性的專題開場。
FY2024 Белая книга по лесному хозяйству и лесоводству открывается специальной статьей о биоразнообразии.

  • 2025年(令和7年)6月3日、林野庁から令和6年度森林・林業白書が公表されました。
  • 特集「生物多様性を高める林業経営と木材利用」を含めて生物多様性について記載したページ数は全部で35ページにおよんでおり、令和5年度白書の7ページに比べて質量ともに充実しました。
  • 15ページでは、我が国の森林生態系の特徴と林業の歴史を概説したうえで、「行為規制から始まった我が国の森林の保護に関する施策は、生物多様性の概念も取り込みながら、単純な保護にとどまらず、保全管理・利用までを含む施策へと深化しているといえる。」と述べています。
  • 実際、20世紀の終わりから21世紀の初めに盛んだった天然林保護運動は、我が国の二次林を守る代わりに、輸入木材、輸入パルプの原料を得るため、海外の原生的な森林生態系を犠牲にしてきました。
  • このころ国内に放置された薪炭林やパルプ用材林の多くは、すでに萌芽更新(伐採した根株からの萌芽による森林の再生方法)に適した時期を過ぎています。また、輸入原料を前提に建設された大規模木質バイオマス発電所が各地で稼働しています。このため、「生物多様性を高める林業経営と木材利用」を実現するためには、新たな技術開発と、国民および企業の意識変革が大きな課題です。
  • もう一つの大きな課題は、平成22年(2010年)、当時の民主党政権による行政刷新会議(通称事業仕分け)の際に消滅した、林野庁の生物多様性関連予算を復活することです。経営的に成り立たない人工林を、生物多様性を高めつつ針広混交林へ誘導するためにも、林野庁の生物多様性関連予算の復活が望まれます。

2025年1月28日火曜日

アセスメント(=環境影響評価)制度・風力アセスメント制度に係る在り方についての答申案に異見書を提出しました。
We have submitted our objections to the draft report on the Environmental Impact Assessment System and Wind Power Assessment System.
我們已針對環境影響評估制度和風力發電評估制度的現況報告草案提出反對意見。
Мы представили свои возражения по проекту отчета о состоянии системы оценки воздействия на окружающую среду и системы оценки ветроэнергетики.

  •  環境省「今後の環境影響評価制度の在り方について(答申)(案)及び風力発電事業に係る環境影響評価の在り方について(二次答申)(案)」に関する意見の募集(パブリックコメント)(1月23日締め切り)に応募し、意見書を提出しました。主な内容は以下のとおりです。
  • 環境配慮手続き、環境影響評価書の継続的な公開および報告書手続きに対する国の関与の必要性を答申案とされたことに感謝を申し述べました。
  • 「種の保存法」「日ロ渡り鳥等保護条約」の保護対象であるイヌワシ・オジロワシについては、出生地と衝突場所との距離が非常に離れており、現在主流の「位置・規模のみなし複数案」では衝突防止に十分な離隔距離を確保できません。
  • このため、十分な離隔距離を確保できる地域への立地誘導による風力発電の導入促進を図ること、十分な離隔距離を確保できない立地については衝突を回避または最小化できる構造の環境配慮型風力発電機の導入促進に必要な支援を国が行うことを提案しました。
  • 環境影響、特に衝突死の予測・評価は不確実性が伴うため、実施後の衝突事故が起きてから順応的に管理するのではなく、あらかじめ、現地調査結果および予測結果の公表にあたって点推定ではなく区間推定法を用いること、絶滅危惧種や地域個体群の環境影響からの回復力を評価し公表することを提案しました。
  • 事後調査の透明性を確保するため専門家等による必要な助言および審査を行う制度の設立を提案しました。この提案は建替事業に係る配慮書手続きを事後調査結果で代替する場合も当てはまります。
  • 小規模風力発電事業では衝突を回避または最小化できる構造の環境配慮型風力発電機を採用した事業者に対して簡易な環境影響評価手法を認めること、必要な支援を国が行うことを提案しました。

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2018年9月8日、イヌワシにも配慮した雪国観光圏スノーカントリートレイルがオープンしました!

雪国観光圏スノーカントリートレイルは、3県7市町村(新潟県:湯沢町、南魚沼市、魚沼市、十日町市、津南町、長野県:栄村、群馬県:みなかみ町)の山岳路、歴史ある古道、温泉地などをつなぐ全長307kmのロングトレイルコースです。 著名なアドベンチャーレーサーであり歴代コースディレ...