2024年2月25日日曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(5)おどし、待ち伏せ、忍び寄りでノウサギを追い詰める。
Series: Golden Eagle Hunting Techniques (5) Scaring, Ambushing, and Sneaking up on Japanese Hare.
系列:金雕狩獵技巧 (5) 嚇唬、埋伏和偷襲日本野兔。
Serie: Steinadler-Jagdtechniken (5) Erschrecken Sie japanische Hasen, lauern Sie ihnen auf und schleichen Sie sich an.
Серия: Приемы охоты на беркута (5) Пугать, устраивать засады и подкрадываться к японским зайцам.

  • 1月上旬、木の生えていない雪の斜面の向こうにある谷へ、オスのイヌワシが飛び込んだ。
  • 谷の手前、標高1,300mの雪の斜面を点々とノウサギの足跡が横切り、疎らに生えたダケカンバの林に入るのが遠目からわかった。
  • 谷から浮かび上がってきたイヌワシは、波状飛翔しながらノウサギの足跡をたどってダケカンバ林の上空に到達した。
  • そのまま林の上空を通り過ぎたイヌワシは、雪に覆われた小ピークにとまってダケカンバ林から出てくるノウサギを待ち伏せた。
  • 20分を過ぎた頃、小ピークから飛び立ったイヌワシは、ノウサギが消えたダケカンバ林の上空で停空飛翔した後、ゆっくり移動して斜面上部のダケカンバの林縁にとまった。
  • イヌワシはすぐに飛び立つと、ノウサギのおよその位置を把握したのか、ダケカンバ林の中央部に向けておどしと思われる激しい急降下を繰り返した。
  • イヌワシは再びダケカンバ林にとまったが、前回よりも林の中央部に近づいている。
  • そろりと飛び立ったイヌワシは、ダケカンバ林の中央に開いたギャップに忍び寄り、静かに両足を雪面に降ろす。
  • 一瞬で雪の中からノウサギをつかみ取り、1km離れた尾根に運んでから摂食した。
  • 一連の狩りにかかった時間は少なくとも1時間43分、移動距離は2km弱だった。近年では、この狩場を含むあちこちの冬山にバックカントリースノーボーダーや登山者が訪れるようになり、イヌワシが落ち着いて狩りのできる環境が少なくなっている。

2024年2月11日日曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(4)ノスリの群れを狙う。
Series: Hunting Techniques of Golden Eagles (4) Attacking a flock of Eastern Buzzards.
系列:金雕的狩獵技巧 (4) 攻擊一群東方鵟。
Serie: Jagdtechniken von Steinadlern (4) Angriff auf eine Herde von Mäusebussard.
Серия: Способы охоты на беркутов (4) Нападение на стадо канюков.

  • 秋のタカ渡りの時期、山頂にかかる雲の中にイヌワシペアが出入りを繰り返していた。
  • 東方から10個体ほどのノスリの群れが通りかかると、メスイヌワシは分断された群れの一部を追って北へ向かった。
  • 残りの群れを追って南へ向かったオスイヌワシは、波状飛翔を行ってノスリの群れを更に上下に分断した。
  • オスイヌワシは波状飛翔の頂点で大きくはばたき、上の群れに向かって上昇したが、自分の3分の1の体重しかないノスリに追いつくことは困難と思われた。
  • 次の瞬間、オスイヌワシは真っ逆さまにきりもみ降下し、圧倒的な速度差で下の群れに追いつくと、1羽を背中からワシづかみした。力が抜けて翼を開いたノスリをぶら下げて、オスイヌワシはゆっくり谷の中へ降りていった。
  • イヌワシは、クマタカ、トビ、ハチクマ、ノスリ、サシバ、オオタカ、ハヤブサ及びフクロウなど、多種類の猛禽類を狩りの対象にしているが、雲を利用して忍び寄ったり待ち伏せしたり、ペアで挟み撃ちにしたり、相手の攻撃を誘ってから不意打ちしたりして、動きの速い相手に対応している。

2024年2月8日木曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(3)3km離れたトラツグミを捕える。
Series: Hunting Techniques of Golden Eagles (3) Catching a White's Thrush 3 km away.
系列:金雕的狩獵技巧 (3) 捕捉 3 公里外的虎斑地鸫。
Serie: Jagdtechniken von Steinadlern (3) Fang einer 3 km entfernten Erddrossel.
Серия: способы охоты беркутов (3) Ловля тигрового дрозда в 3 км.

  • 積雪期の午後、大きな営巣谷を西に下る支尾根にとまっていたオスイヌワシが南西に向かってゆっくり飛び立った。
  • 徐々に翼をすぼめて速度を増したオスは、低い尾根をへだてた支谷に入ったところで南向きに急降下した。
  • 急いで支谷の見える位置に観察場所を移動すると、冬枯れした広葉樹林がまばらな北東向きの急斜面から、トラツグミをつかんだオスが舞い上がったところだった。
  • とまり場所からトラツグミをつかんで舞い上がった場所まで3km離れていた。

2024年2月6日火曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(狩りの定義)

  •  本年1月からシリーズ:イヌワシの狩りの投稿を開始しました。遅ればせながら本シリーズにおける狩りの定義を明らかにしておきます。
  • 狩りの定義は1993年に動物社から発刊された「オックスフォード動物行動学事典」(デイヴィド・マクファーランド編、木村武二監訳)の377から380ページ、「狩猟 Hunting」に準拠しています。
  • 同事典では狩猟を下記のように定義しています。
「狩猟は捕食行動の1つの側面で、ある種に属する動物が、他種の個体をとらえる過程をさす。したがって狩猟は、より一般的な探索行動や探査行動とは区別される。狩猟には積極的な探索が含まれることも、また含まれないこともある。(後略)」
  • また、同事典では狩猟の手法及び過程を下記のように分類しています。
【屍肉食】 
【忍び寄り】
【追跡】(誘導追跡、弾道襲撃、にせの襲撃)
【捕獲】
【共同狩猟】
  • イヌワシの狩りは、上記のすべてを使い分け、または組み合わせて行われます。なお、獲物の探索のみの行動は、本シリーズの対象から除外しました。

2024年2月1日木曜日

シリーズ:イヌワシの狩り(2)ペアで執拗にヤマドリを追う。
Series: Hunting Techniques of Golden Eagles (2)Pair relentlessly pursues Copper Pheasant.
系列:金雕狩獵技巧 (2)成對無情追逐銅長尾雉
Serie: Steinadler-Jagdtechniken (2)Paare verfolgen unerbittlich den Kupferfasan.
Пара неустанно преследует медного фазана.

  •  北東から南西に伸びる長さ3,000m、高さ300mの主尾根から北西向きに4つの谷が下っており、北西から順に1番谷、2番谷、3番谷、4番谷と呼ぶことにする。主尾根の南西端は西向きに二股に分かれており5番谷と呼ぶことにする。
  • 残雪期の午後、オスが1番谷へ飛び込んだ。そこからヤマドリが飛び出して南西向きに逃避するところをメスのイヌワシが見ていた。イヌワシペアは南西に移動して2番谷の左岸支尾根にとまった。オス、メスの順で谷に飛び込むと、ヤマドリが飛び出してさらに南西向きに逃避した。イヌワシペアは3番谷を通り越して4番谷の右岸支尾根にとまった。再びオス、メスの順で谷に飛び込むと、ヤマドリが飛び出して5番谷の方向へ飛去して見えなくなった。ヤマドリを追ってイヌワシペアも見えなくなった。既に薄暗い時間だったのでこの日の観察は終了した。
  • 翌朝、どちらもそのうを満杯に膨らませたイヌワシペアが5番谷から現れた。

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2018年9月8日、イヌワシにも配慮した雪国観光圏スノーカントリートレイルがオープンしました!

雪国観光圏スノーカントリートレイルは、3県7市町村(新潟県:湯沢町、南魚沼市、魚沼市、十日町市、津南町、長野県:栄村、群馬県:みなかみ町)の山岳路、歴史ある古道、温泉地などをつなぐ全長307kmのロングトレイルコースです。 著名なアドベンチャーレーサーであり歴代コースディレ...